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米国最高裁判決:商標の「Tracking」は陪審が行うべき事実問題と結論 (Hana Financial v. Hana Bank)

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米国最高裁は今年、商標の「Tracking」における判断は、事実問題として裁判官ではなく、陪審が行うべきであるとの判決を下しました。商標の「Tracking」とは、商標権者が変更前の商標で獲得した優先権を失うことなく商標を変更できることを指します。「継続した商業印象」が変更前と変更後の商標に存在する場合は、商標権者は新しい商標の使用権を古い商標に「Track」することで保持することができます。

最高裁はHana Financial v. Hana Bank. 574 U.S. ___ (2015) 事件判決によって、Trackingに関する判決方法適用に関する複数の巡回控訴裁判所の意見不一致を解決しました。この意見不一致は、CAFCと第6巡回控訴裁判所がTrackingを法律問題(裁判官が判決を下す問題)と見なしたことを発端にします。この問題は、消費者が市場において、変更前と後の商標をどのように受け止めるかに関する主観的判断を軸としています。

2007年、ロサンゼルス発祥の金融サービス会社、Hana Financial社(HFI)はHana銀行がその名称を米国で使用することを防ぐ目的で、上記銀行による商標権侵害を訴えました。Hana銀行は、「Hana」の名称を最初に使用したのはHFIではなく自行であると主張しました。Hana銀行は1994年5月に「Hana Overseas Korean Club」を設立し、その3ヶ月以内に米国各地で発行されている何種類かの韓国語新聞(ロサンゼルス地区のコリア・タイムスを含む)に広告を載せ始めました。一方HFIは1995年に入るまで社名を使用していません。2007年、カリフォルニア中部地区地方裁判所は略式裁判において商標優先権を理由にHana銀行を支持する判決を下しました。

2011年、この事件は第9巡回控訴裁判所によって地裁に差し戻され、陪審員は全員一致でHana銀行が「Hana」名称の優先権を持つと判決しました。 控訴においてHFI社は、「Hana Overseas Korean Club 」名称を「Hana銀行」名称のTackingの前提とした陪審の判決は誤りであると主張しました。HFI社は、上記2通りの商標は「継続した商業印象」を与えるには違いすぎるものであると訴えました。第9巡回控訴裁判所は被告側、Hana銀行を支持し、Tracking は陪審によって判断されるべき事実問題であり、陪審による上記判決は妥当であると述べました。(Hana Financial v. Hana Bank, 735 F.3d 1158 (9th Cir. 2013) )

HFI社は最高裁に控訴し、Hana銀行の商標優先権は、事実問題として陪審が判断するのではなく、法律問題として裁判官により判断されるべきであると訴えました。最高裁は全員一致でHana銀行を支持し、Tracking は事実問題であり、判断は陪審に委ねられるべきであると判決しました。最高裁は「Tracking の判断は一般的な購入者や消費者の視点によりなされるべきものであり、よって陪審により判断されるべきである」と述べました。最高裁は上記判決が商標法の他の側面に与える影響、例えばconfusion standard(混同概念)などの他の消費者に与える印象に関係する問題に与える影響については言及していません。

Hana Financial v. Hana Bank事件は米国最高裁が約10年ぶりに商標について実質的な判決を下した事件となりました。


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