前回お知らせした通り、今回の記事は前回の続きとなります。今回はパテントトロールを提訴する際使用できる2種類の請求原因のうち、その1を詳しくご紹介します。
1. パテントトロール対策の州法に基づく請求
過去3年の間に、多くの州がNPE(パテントトロール)を含む不正な特許侵害主張をするものを民事訴訟で提訴することができるよう、民事の請求原因をNPEのターゲットとなった企業に与える法案を提案、議論、そして制定してきました。これらの州は、このような法律を制定することにより、中小企業が大規模かつ洗練されたNPEと戦う上での効果的な補助を与え、結果的に経済の成長を促す(または経済成長を阻害されることを食い止める)ことを望んでいます。パテントトロール対策の法律を成立させた最初の州はバーモント州であり、Bad Faith Assertions of Patent Infringement Actという法令を2013年5月に成立させました。この法令はNPEが不正な主張をしたかどうかを査定する主観的テストを確立したもので、下記は裁判所NPEの行為を不正と見なすか否かの査定事項の例をリストしたものです(包括的ではない)。
- NPEが送った催告書にターゲットとなった企業の技術が特許のどのクレームを侵害するかの明確な説明が欠けているかどうか
- 催告書を送る前にNPEが特許のクレームとターゲットとなった企業の技術の比較分析を怠ったかどうか
- NPEがターゲットとなった企業に対し不当に短い期間内のライセンス料支払いを求めたかどうか
- NPEが正当でない価格のライセンス料支払いを求めたか
- NPEの特許侵害主張が欺まん的であるか
- NPEが自身の特許侵害主張は実質的でないことを知っていたか
- NPEまたはその子会社や関連会社が過去に同じ、または似たような実質的でない特許侵害の主張をしたか
この法令は、ターゲットとなった企業に対しさらに何通りかの保護策を提供しています。例えば、NPEが不正な主張をしたという正当な可能性があれば、ターゲット側は裁判所に自身の訴訟費用に値すると見積もられる額をNPEが保証金として担保に入れさせるよう請求をし、認められる可能性があります。 また、裁判所は他の衡平法上の救済処置、損害賠償、経費や弁護士費用、さらにはなはだしく悪質な申し立てに対しては、3倍賠償を裁定する可能性もあります。
2013年5月以降、アメリカ国内の半数以上の州が不正な特許侵害主張をするものに対する追加の罰則を課す法令を提案または制定しています。これまでに14の州が、上記の法令のような民事訴訟における請求原因を与える法律を制定してきました。他の4州においては、このような民事の請求原因は制定していないものの、州検事総長が不正な特許侵害主張をするものに対し、賠償を求める権限を与える法律を制定しています。さらに現在、他の10以上の州議会が、不正な特許侵害主張をするものに対する何らかの請求原因を導入する検討をしています。
これらの法律はまだ比較的新しく、現在のところまだターゲットとなった企業がこれらの法律に基づく請求原因を使用し、NPEを提訴した例はありません。これらの法律がどれほど効果的にNPEと戦うすべをターゲットとなった企業に与えることができるかは、これから明らかになってくるでしょう。
次回はこのトピックの最終回、RICO法を民事訴訟で使用しNPEを提訴する方法についてお話します。