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Cuozzo v. Lee – 米国最高裁判所、クレーム解釈の基準とIPR(当事者系再審査)における上訴について判断を下す

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2016年6月20日、米国最高裁判所はCuozzo Speed Techs., LLC. v. Lee事件(579 US Cuozzo v. Lee )に関し、以下の二点について判決を下しました。(1) 米国特許商標庁の再審査機関であるPTAB(特許審判部)でのInter Partes Review: IPR(当事者系レビュー)における適正なクレーム解釈の基準について、ならびに(2) PTABによるIPR開始の決定が上訴可能であるかどうか。一番目の点について最高裁は、現行の最も広義で合理的なクレーム解釈の基準が引続きIPRに適用されることを確認しました。二番目の点については、最高裁はPTABによるIPR開始の決定は、上訴できない、としました。Cuozzo事件の判決はIPRを背景にしていますが、この判決はPTABでの他の付与後異議申立制度にも適用されるでしょう。

付与後異議申立制度とは米国特許商標庁のPTABにて米国特許の有効性に異議を唱えるためのものです。それには、IPR(当事者系レビュー)、Post-Grant Reviews(付与後レビュー)、並びにCovered Business Method Patent Reviews(対象ビジネス方法特許レビュー)があります。これらの手続きはPTABの特許行政判事3人の前で行われ、地方裁判所での訴訟と似ているといえますが、限られたディスカバリー(開示手続き)や固定のスケジュール他、独特な手続きなどによって、より合理化されています。IPRは2012年9月から開始され、以後、米国特許の有効性を審議する方法として非常に人気の高いものとなりました。

今日までに、IPRは付与後異議申立制度の中で大多数を占めています。その結果、以下の二つの重要問題が浮上してきました。一つは、PTABが係争クレーム中の用語の意味を決定する上で、最も広義で合理的な解釈(the broadest reasonable interpretation: BRI)の基準を適用してきたことです。この基準は、米国特許商標庁が出願書を審査する際に当てはめる基準と同じですが、地方裁判所が用いる、当業者が通常使う慣用の意味のクレーム解釈の基準とは異なります。Phillips v. AWH Corp., 415 F.3d 1303, 1314 (Fed. Cir. 2005)参照。IPRで使われるような広義のクレーム解釈は、地方裁判所で使われるクレーム解釈の基準と比べると、クレームの無効化を容易にします。

Cuozzo事件においてPTABは、嘆願書にあった根拠を認めると共に、嘆願書に明記されない理由についてもそれを認め、Cuozzoの特許に対するIPRの開始を許可しました。PTABはまた、係争クレーム用語の解釈に、広義で合理的な解釈(BRI)の基準を適用しました。係争中のクレームは特許性がないと判断され、先行技術を基に失無効になりました。Cuozzoは、PTABが適用するクレーム解釈の基準は適正ではなく、また、PTABが審査を行うと決定したことに関しては特に嘆願書に明記された根拠に基づいた決定ではなかったことから、上訴可能であるべきだとして、米国特許商標庁長官のMichelle Leeを訴えました。

第一の問題についてCuozzoは、付与後異議申立制度は特許審査というよりも地方裁判のようなものである為、PTABでの付与後異議申立と地方裁判のどちらもが同じクレーム解釈の基準を適用するべきだ、と主張しました。知的財産関連の控訴に特化している連邦巡回はこれに異議を唱え、PTABではBRIの基準が当てはめられるべきと判断しました。これについて最高裁は満場一致で連邦巡回に合意しました。Breyer裁判官が多数意見を執筆し、立証責任が低いなどIPR独特の特徴を挙げ、IPRは地方裁判というよりはむしろ専門機関の手続きであるとしました。最高裁はまた、PTABを司る法は特許商標庁にどのクレーム解釈の基準を適用するかの裁量を与えるものとしました。

二つ目の問題に関してCuozzoは、PTABのIPRを許可するか拒絶するかどうかの決定は上訴可能であるべき、と主張しました。連邦巡回はこれに同意せず、最高裁も連邦巡回の側に付きました。ここで、最高裁では意見の相違があり、Alito裁判官とSotomayor裁判官が反対意見を唱えました。多数派は、PTAB並びにIPRを司る制定法は明確にPTABによる嘆願書に対する判断は上訴することができないと規定する、としました。さらに多数派は、嘆願に対する決定が上訴可能かどうかを決める上で、米国連邦議会は特許商標庁に相当な権限を与えた、としました。しかしながら最高裁は、憲法上の質問に関係している場合や、特許商標庁が例えばIPR手続きで取り上げられない根拠に基づいてクレームを無効化するなど、その法廷限度を超えていないかどうか判断する場合など限られた問題については、上訴も在りうる、としました。一方、PTABが適正にその真価に基づいて嘆願を許可もしくは拒絶しているかどうかについては、上訴できません。

まとめると、米国最高裁は現行のクレーム解釈の基準とPTABのIPR開始の判断が最終決定であることを維持したことになります。よって、付与後異議申立制度は引き続き、米国特許の有効性に異議を唱える強力な手段であり続けることになるでしょう。


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